2022.4.27 明らかに理不尽なスコア vsマンチェスターシティ

 バルサがラージョにシーズンダブルを許し、リーガをほぼ手中に収めたマドリーは、4季ぶりの欧州制覇に向けて大一番に臨む。ラウンド16でパリとの歴史的なゲームをものにし、クウォーターファイナルでチェルシーとの壮絶な210分を制し、間違いなく一番勢いに乗る。

 

 

 マドリーは負傷でカゼミーロを欠く。出場が危ぶまれたマンディとアラバは先発メンバーに名を連ねた。中盤トリオはクロース、フェデ、モドリッチの三枚。アンチェロッティが最後まで決めかねていると明かした右サイドの人選はロドリゴだった。

 対するシティも台所事情は厳しく、カンセロを出場停止で欠き、カイルウォーカーをも負傷で欠く。右サイドバックの人選に注目されたが、ストーンズスクランブル出場。デブルイネも負傷を抱えながらの出場となった。

 

 試合は明らかにシティ優勢で進む。開始早々マフレズが4人ほど引きつけて、カットイン。左足のクロスに二列目から飛び出したデブルイネがダイビングヘッドを沈め先制に成功。立て続けに11分、左サイドからデブルイネが鋭いクロス。処理に誤ったアラバを反転でかわし、好調ガブリエウジェズスが追加点。1失点目は右サイドのベルナルドシウバのランニングに、対人守備が強みのマンディがつられると同時に、ヴィニシウスのプレスバックもモドリッチ・クロース・アラバの寄せも甘く、簡単にクロスまで持ち込ませてしまった。フェデもデブルイネの飛び出しについてこれず、あっさりと得点を許した。チェルシーとの一戦目でも同じパターンで、ハヴァーツに頭で決められている。カルバハルの前に、斜めのランニングで飛び込まれる形は要修正だ。2失点目は、ミリトンがつり出されたスペースに、アンカー起用のクロースが要所のコースをふさげていなかった。カゼミーロであれば、CBの空けたスペースのカバーもできていただろう。

 その後も圧倒的なシティの攻撃にマドリーはさらされ続ける。マフレズの右足のシュートはサイドネット。ジンチェンコの左足のシュートは僅かにゴール左へ。

 この時、シティが決めきれずにいる感じを観て、この試合マドリーがどうにかしてしまいそうな予感がした。

 その予感は的中する。あまりにも理不尽なゴールが決まった。ハーフandハーフのこぼれ球を中盤でモドリッチが何とかボールをマンディにつなげると、マンディはアーリークロス。ジンチェンコのマークの中、後方からのボールを大エース・ベンゼマが左足でボレーシュートをコースに流し込んだ。

 

 

 マドリーはこのあたりからプレスを変えた。それまでは、シティの完成度の高いパス回しに苦戦し、後手後手を踏んでいた。SBがアンカー・ロドリの脇でビルドアップに加わり、ベルナルドシウバも各所に顔を出す。それにデブルイネの最高質プレーが加わるという、ペップシティが何年もかけて築き上げた攻撃だ。マドリーは後方のリスク承知でモドリッチ、フェデらが果敢にボールにプレスをかけた。特にデブルイネには時間を与えないように。相変わらず中盤トリオの完成度では、シティに終始完敗だったが、ボールに行くことで、マドリーに勝機が生まれた。

 前半終了間際、ストーンズが交代し、ベテラン・フェルナンジーニョが右サイドバックに。ハーフタイムにはアラバに代わってナチョがCBに入った。負傷を押しての出場だった両選手。この一戦にかける思いは両チームともに計り知れない。

 後半22分、そのナチョがロドリの後方からのフィードの落下点を誤り裏をとられ、ミリトンも入れ替わると、抜け出したマフレズがクルトワと一対一に。左足でファーサイドを狙ったシュートは、ポストに当たる。そのこぼれ球を、フォーデンが押し込もうとするが、カルバハルがライン上でファインクリア。何とか失点を免れた。ペップも大きなリアクションで頭を抱える。「マドリー相手にこれをしては負ける」と。

 しかし、フォーデンは直後に仕事をする。右サイドで交代出場したフェルナンジーニョも素晴らしかった。53分、ヴィニシウスの縦パスをインターセプトする。そこからワンツーで抜けると、サイドの選手顔負けのボール運びで右サイド深くまで持ち込み、フォーデンに合わせた。ビルドアップ中のショートカウンターということで、カルバハルの絞りは間に合わなかった。

 しかししかし、直後の55分、フェルナンジーニョにしてやられたヴィニシウスもやり返す。3失点目と同様なマンディの縦パスを、トラップスルーでフェルナンジーニョの股を抜き入れ替わる。ハーフラインからそのまま独走で、ゴールエリアまで。中の折り返しのコースもなく、プレスバックの圧も感じながら、GKエデルソンの飛び出しもあるなかで、実がサイドネットに流し込んだ。この大一番でこの決定力。今季マドリーの攻撃を牽引する男がやってくれた。ここまでのパリ、チェルシーとの大一番でゴールという結果こそ残せていなかったヴィニシウスが決定力を見せつけた。

 

 

 シティの中盤の完成度に苦戦をしながらも、マドリーは何とか食らいつき、一進一退の攻防が続く。スコアが動いたのは74分。デブルイネの仕掛けにクロースが愛をかけ、

ファール、と見られたが好ジャッジで主審は流す。カマビンガ、クロース共に足が止まっていたが、プレーを続けたベルナルドシウバがカルバハルのプレッシャーを受けながらも左足で豪快に突き刺した。

 それでもマドリーはまだ食らいつく。フリーキックラポルトの手に当たり、PKを獲得。今月3度PKを外しているベンゼマがキッカー。直前のリーガ・オサスナ戦では、2度も左下に蹴ったPKを止められている。計り知れない緊張感の中、ベンゼマの蹴ったコースは、、真ん中にパネンカ。信じられない肝をしていた。シティはベンゼマら、マドリー選手人の経験値と、歴史、慣れ、格の違いにあっけに取れれたシーンだったのではないか。

 

 

 ホームチーム4-3のド派手な打ち合いで、シティが先勝した。しかし、試合内容、チームの完成度で見れば理不尽すぎるスコアだ。サッカーという面白い競技の最高峰の試合に、観客、両指揮官、世界中の視聴者たちがあっけにとられただろう。特に、前ラウンドで、アトレティコに5-5-0システムをひかれ、シメオネスタイルに疑問が叫ばれた試合を経ているペップは、いちサッカー人として大満足の試合だっただろう。しかし、シティの監督ペップグアルディオラとしてはあまりに理不尽な一点差。

 パリ、チェルシーをも飲み込んだベルナベウで残り90分の決戦が残っている。マドリーとしては問題ないだろう。しかし、「ベルナベウの力がある」で片づけてしまっていいのだろうか。二度あることは三度ある。ベルナベウの魔法、マドリーの歴史に頼るだけでは、シティの完成度に太刀打ちできないのではないか。既に苦難の数々を乗り越えてきたマドリーだが、間違いなく今までで一番難しいゲームになる。両チームともに、カンセロやカゼミーロらも戻ってくると予想される2ndレグ。今季一番のビッグゲームは一週間後。両指揮官の戦いは既に始まっている。

 

 


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写真はレアルマドリード公式HP