21-22 全選手査定【前半】

レアル・マドリードは今シーズンリーガとCLの二冠を達成した。

アンチェロッティの招聘、ラモス&ヴァランの退団、など変革期を迎えたマドリー。トップチーム登録全選手のシーズンを通しての出来栄えをSS、S、A、B、C、Hの6段階で評価してみたい。

 

 

アンチェロッティ監督〉SS

 まずチームづくりとしてメンバーを固定した。特に、シーズン前半の11月~12月に及ぶ強豪との過密日程の連戦を全勝で乗り切った。スーペルコパも制した。この段階ではチームはリトリートし、引いた守備から流れを作るチームだった。ヴィニシウスのスピードを活かしたカウンターや、モドリッチやクロースなどベテラン選手たちの無駄な疲労の少ない効率的な戦術だった。

 しかし、国王杯の敗退やCLラウンド16ファーストレグのパリ戦において、この戦術が立ち行かなくなった。

 思い返されたのは第1次政権時のデジマを達成した翌年、シーズン前半戦に連勝記録を重ねながらも、後半戦の急失速で無冠に終わり、解任された14-15シーズン。

 そこでの経験からかアンチェロッティはパリ戦後、大胆なチーム改革を行った。直後のリーグ戦からリトリート守備からゲーゲンプレス守備に、180°シフトチェンジ。パリ戦直前のリーガ・ソシエダ戦までに見事に仕上げて見せた。パリとのセカンドレグ、歴史的な逆転劇を見せ、前線からの激しいプレッシングというスタイルでそのまま二冠を達成した。後半戦はインテンシティの高いプレースタイルに転向したことで、モドリッチ・クロースらよりも、フェデ・カマビンガら若手の活躍も目立った。

 また、シーズン前半戦の引いて守って、守りきれるチーム力は、CL決勝で発揮された。シーズン途中に柔軟で大幅なスタイル変革をしながら、シーズン終盤に向かうにつれて、チームを成長させ、勝利に導いた手腕はさすがの一言だった。

 五大リーグ制覇・CL最多優勝という偉業を達成した、同監督には最高評価を与えたい。

 

クルトワ〉SS

CL決勝が顕著だったが、CL・リーガ・スーペルコパ全てにおいて、彼のおかげで幾度も失点を免れた。彼がいる限りマドリーの堅守は保障される。言葉が見つからない程の充実のシーズンだった。最高評価に異論はない。

 

〈カルバハル〉A

やや調子の波があったシーズンだった。彼が調子が良ければチームも調子が良い。不用意なパスミスも目立った。しかし、この選手はとにかく無理が効く。数的不利でも、苦しい状態でも何とかしてしまう。大事なところでは活躍してくれる。怪我がなかった今シーズンは高評価に値するだろう。

 

ミリトン〉S

今シーズン、ヴィニシウスのブレイクの影に隠れながらも、伝説的センターバック退団の穴を埋める以上の活躍を見せた。対人も、ビルドアップも、勝負強さも、得点力も申し分ない。最高評価に至らなかったのは、CLでいくつかふわふわとしたプレーが見えたからだ。パリ戦、シティ戦ともに足を痛めながらも、気合いで奮い立たせる姿は印象的だったが、どこか危なっかしさを感じた。しかし、今シーズンのマドリーの成功は彼なしには語れない。

 

〈アラバ〉S

 フリーでの加入だったが、これ以上ない補強だった。DFリーダーとしてミリトンと最強のコンビを形成するだけでなく、ボールの配給や精神面でもチームの柱になった。クラシコでの得点は、彼の充実のシーズンの始まりを告げる大きな花火になった。終盤戦、最も重要な時期に負傷離脱で欠けてしまったのは惜しかった。来シーズンはリュディガーの加入によって、左サイドバックでの起用増加も見込まれる。来季も椅子を掲げて欲しい。

 

〈バジェホ〉H

ほとんど出場機会はなかった。リーガ終盤ターンオーバーで起用されるとナチョらと遜色ないプレーを見せた。シティ戦でも終盤、満身創痍のミリトンとの交代で僅かに出場した。貴重なバックアッパーだったが、アンチェロッティの信頼はないといえる。評価はなし。

 

〈ナチョ〉SS

今季マドリーのCBを支えたのはミリトン・アラバだけではない。どちらかが抜ければ完璧に穴埋めをし、 サイドバックも務められる。パリ戦では左サイドバック、シティ戦ではセンターバック。リュディガーの加入が鬱になるほど、来シーズンも起用を期待したい選手だ。主役になれないながらも、マドリーを影から支えるナチョは、役割を完璧に果たしたといえる。最高評価以外は与えられない。

 

アザール〉C

 序盤はベンゼマ・ベイルと強力スリートップでスタートしたものの、結果も残せず、負傷癖も治らず散々なシーズンに。完全にヴィニシウスの陰に隠れてしまった。来シーズンの活躍を宣言した彼に期待を込めての最低評価。

 

〈クロース〉A

シーズン後半戦、カマビンガ・フェデの台頭もあり、不要論が囁かれる。アンチェロッティも途中交代要因の常連とした。しかしながら、正確なフィードや、モドリッチとの連携はシーズンを通して見せていた。アグレッシブさや、推進力は彼に求めるものではない。低い評価には値しない。CL決勝ではフル出場で自身の価値を証明してみせた。来シーズンもスタメン陥落が危惧されるが、やすやすとは譲らないだろう。

 

ベンゼマ〉SS

今シーズンのバロンドーラーだ。チームの得点源となるだけでなく、試合づくりにも大いに貢献した。ヴィニシウスとのコンビも見事で、34歳にして最高のシーズンだった。CL・リーガで得点王、アシストランキングでも上位に名を連ね、実質のゲームキャプテンも務めた。クラブの顔であり、チームの要。まさに現在世界最高のプレイヤーだ。

 

〈アセンシオ〉B

結果こそ残すものの、評価は上がらない。それは強豪との重要な試合で結果を残せないことが一因だろう。2試合とも先発したパリ戦とのラウンド16では、特に最高の試合だったセカンドレグ、1人乗り切れなかった。退団が噂されるも、リーガ2桁得点や、理不尽ミドルは来シーズンも期待したい。圧倒的な成績を残し、強豪とのビックマッチで主役になることが必要だ。

 

〈マルセロ〉B

 左サイドバックはマンディ、ナチョに次ぐ3番目の立ち位置で、出場機会こそ少なかったものの、技術の高さは見せつけた。リーガ優勝決定のエスパニョール戦では今季の退団が惜しくなるような、美しいプレーだった。チームのキャプテンとして、ビッグイヤーを掲げ最高のシーズンで、マドリーとの最高のストーリーを締めくくった。

 

〈ルニン〉H

 クルトワの陰に隠れながらも、出場したリーガではPKストップの活躍を見せた。若く将来のマドリー守護神として期待できるが、出場経験も必要だ。レンタル移籍が既定路線か。