22-23開幕編 総括

 フランクフルトとのUEFAスーパーカップ勝利から今シーズンは始まった。カゼミーロ・クロース・モドリッチは磐石だった。ヴィニシウス&ベンゼマのコンビで点も取ってみせた。

 しかし、カゼミーロはマンチェスターUに電撃退団。 今夏加入したチュアメニがアンカーを務めることになった。1節アルメリア戦で先発するも不本意なプレーを見せる。同じく今夏加入したリュディガーも裏を取られ失点に繋がった。チーム全体が不安定なパフォーマンスながらも、アラバのFKゴールで何とか勝ちきった。

 それでも2節セルタ戦では、チュアメニがカゼミーロと異なる特徴を見せつける。優しいスルーパスでヴィニシウスのゴールをアシストした。

 続く3節エスパニョール戦、88分のベンゼマのゴールで勝ち越し、持ち前の終盤の勝負強さは今年も健在だ。

 4節は今シーズンも好調ベティスとの全勝対決だった。フェキルが開始早々に負傷退場。大きな要因だったと言える。ベンゼマの降りたスペースを使い、アラバのロングフィードから1本で裏に抜け出したヴィニシウスがクラック級のゴールを奪った。一度は追いつかれるものの、後半中盤にロドリゴの勝ち越し弾で何とか勝ち切った。

 そのミッドウィークにはセルティックとのCL開幕戦を迎えた。直近のリーグでは昨季ELファイナリストのレンジャーズを4-0で叩いた、日本人カルテットも所属する注目の一戦だった。前半圧倒的ホームの勢いをそのままにセルティックが猛攻を仕掛ける。しかし、マドリーは劣勢時も無失点で耐え切る強さがある。後半、ベンゼマとの途中交代で出場したアザールが久しぶりの躍動。全3得点に絡む活躍をみせた。フェデからヴィニシウスの先制点は見事だった。昨季CL決勝を彷彿とさせるコンビだ。ただ、この試合で負傷したベンゼマは結局最初の代表ウィーク前に復帰することはなかった。

 中3日で迎えた5節マジョルカ戦。フェデのハーフコート独走逆足ミドルなどもあり快勝した。

 CL2節ライプツィヒ戦でもフェデは躍動。劣勢の時間帯も耐え抜いて、終盤にヴィニシウスがキープし、右サイドのフェデへ。フェデは右足のシュートフェイクでDFを外すと、またも左足でファーへと蹴りこんだ。

 代表ウィーク中断前最後の一戦はマドリードダービーアザールは結局チャンスを掴みきれず、ベンゼマの代わりはロドリゴがトップ先発で務める。またまた劣勢の押し込まれるスタートだったが、最初の波を耐え抜き、先制点はマドリー側に生まれる。ロドリゴがチュアメニに預けるとそのまま裏へ。チュアメニの空間を使う、柔らかい浮き玉パスを、後ろからの難しいシュートとなったが、ロドリゴがダイレクトでネットに突き刺した。2点目はヴィニシウスの裏への抜け出しからの決定機。ポストに当たってこぼれたボールを、猛烈なスプリントで駆け込んだフェデが追加点を沈めた。結局2-1で危なげなく勝利。シーズン全勝の圧巻9連勝で最初の代表ウィークを迎えた。

 

 なんと行ってもこの好スタートの要因はチュアメニた。カゼミーロの穴を埋めるどころか、彼には無いパスセンス・ボールキープ能力を見せる。自らがビルドアップを務めることもできるうえ、モドリッチもしくはクロースのポジショニングを見ながら、ビルドアップを彼らに任せ高いポジションをとることも。もうカゼミーロのやっていた黄金トリオの連携を遜色なくこなしている。好アシストも魅力的だ。激しい玉際や高さも強みだ。もう1年目の選手に求めることは酷かもしれないが、ビックマッチでの勝負強さや強豪相手への守備の強度やポジショニングも注視したい。

 

 ベンゼマ不在でも勝ち切れるようになったことも大きい。ベンゼマ負傷という最初の試練が結果的にチームの成長に繋がった。ロドリゴの決定力向上、フェデのチームの核主力級の活躍・得点力の開花、ヴィニシウスのますます強まる得点力。モドリッチやアラバら重鎮たちの好調も確かだ。

 

 昨シーズン最悪の1年を過ごしたバルセロナは大量補強を敢行。レヴァンドフスキが圧巻の活躍でチームを引っ張り好調を維持。敗れたもののバイエルン相手にも攻勢を見せた。リーグでも、神がかるマドリーを、勝ち点2差で追いかけている。

 

 アンチェロッティ体制2年目は最高のスタートを切ったといえる。このまま代表ウィーク明けも調子を維持して、シーズン最初のクラシコを勝利し、確かなものにしたい。とはいえ長いシーズン、落ち込む時期もある。第一次政権時に連勝街道を進みながら、後半の急失速で無冠に終わった経験のあるアンチェロッティならば、どんな時期をも乗り越えられる。